ジャパンヘルスケアの理学療法士、中田です。今回は腰痛に関して文献レビューみたいな感じでブログ投稿です。
参考にさせていただいたのは、
「非特異的腰痛の診断と特徴」というタイトルのもので、山口大学整形外科の先生方が今年(2017年)に発表したものになります。
非特異的腰痛の診断の現状
非特異的腰痛って難しい言葉ですけど、簡単に言えば原因がはっきりしない慢性的な腰痛のこと。
腰痛症のうち85%ぐらいは原因を特定することが出来ないとうショッキングな話もあるほど、腰痛の鑑別診断は難しいと言われています。原因がはっきりしないから治療が難しくて治りにくい。
そうなんです。今まで腰痛は、診断が非常に難しくて原因をきちっと判別するのは難しいと言われてきました。
MRIを撮ったとしても、その画像に出ている兆候と実際の痛みの原因が別であることがよくあったんですね。
この文献でも画像所見だけでは診断の決定打にはなり得ないと述べられていました。
そんな現状の中、今回の論文での結論は、原因がよくわからない慢性腰痛(非特異的腰痛)でも、丁寧な問診と診断を行えば、その原因は特定可能だ。ということでした。
これってとても嬉しいことです。
腰痛って先にも述べた通り、検査で出た結果と実際に痛んでいる原因が別にあることが多々あり、試行錯誤の中で治療を行うことがよくありました。でも原因がはっきりすればその状態が改善されていくわけです。
この判別のためには、
- いくつかの検査を組み合わせていくこと
- いわゆる除外診断(他の原因を排除していくための診断)
が必要になってきます。
これがしっかり出来れば…とは言うものの、かなりの時間がかかるために臨床現場ではなかなか出来ていないのが現状みたいです。
もちろん全部の検査をするなら患者さんにも時間と金銭的な負担がかかってしまいます。
例:椎間関節性腰痛の場合の診断
実際に詳細な判断をするためにはどうすればいいかと言うと、例えば椎間関節性腰痛。
これの判別には、Kemp徴候や障害部分の圧痛は診断に有用と言われていますが、確定診断するためにはブロックが有効で、他にもいくつかの検査を組み合わせていければ更に精度の高い判別ができるようになります。(専門用語ですいません)
感度と特異度
上の図の見方ですが、Sensitivityが感度。つまりこの検査で陽性反応が出るかどうか。
このケースで言えば、椎間関節性の腰痛の可能性が高い人は、一番上のKemp signに引っかかりやすいということになります。
ただ、数字が0.7。つまり70%は反応が出るけど、残りの30%は椎間関節性の腰痛でも反応が出てくれません。
だから他の検査と組み合わせる必要があるわけです。
そしてSpecificityは特異度。この特異度が高いほど、障害のない人が陰性反応が出るかどうか。
このケースで言えば、数字が0.85。つまり85%の場合で椎間関節性の腰痛のない人が、Kemp signに引っかからない。
残りの15%の人が椎間関節性の腰痛がなくても、Kemp signで反応が出てしまうということになります。
ちょっと…難しいですよね。これの図を見るとだいぶ理解が進むかもしれないのでリンクを貼っておきますね。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/igakutoshokan1954/51/4/51_4_387/_pdf
非特異的腰痛の診断をした結果の原因一覧
さて、こういった複合的な検査を各種腰痛で行うと、今まで判断が難しかった非特異的腰痛のうち72%が診断可能になったんです。
残りの28%は社会的要因(ストレス性のものや、痛みがあることで得をしている場合など)や、どうしても診断が難しかったもの。この28%が純粋な意味での非特異的腰痛になります。
こうやって詳細に非特異的な腰痛症の判別をしていくと、多いのは
- 筋筋膜性の腰痛(筋肉の問題からくるもの)
- 椎間関節性の腰痛(背骨の関節の問題からくるもの)
- 椎間板性の腰痛(背骨の中の衝撃吸収材が問題となっているもの)
みたいですね。
これは、理学療法士の出番な気がします!
筋肉の問題なら筋肉のコンディションを整えるetc。
背骨の関節なら、背骨のコンディションを整えるetc。
背骨の中の衝撃吸収材なら、その部分に負担をかけない身体の使い方を練習するetc。
で対応していきたいですね。
腰痛って本当に辛くてきつい。
僕も一度車に引かれたことがあり、その際は腰痛に苦しみました…
なかなか治らない腰痛ですが、原因をしっかり調べて治していきたいですね。
参考
非特異的腰痛の診断と特徴
鈴木秀典, 寒竹司, 今城靖明, 西田周泰, 舩場真裕, 田口敏彦
山口大学整形外科
中国・四国整形外科学会雑誌 29(2): 171-174, 2017.