医療と健康のBLOG | ジャパンヘルスケア

人生の一場面

ジャパンヘルスケア代表医師の岡部です。

今日は充実した診療日でした。
日本の素晴らしい薬をくれと言いつつ明日中国に帰る中国人の糖尿病患者さん。
全身に強い痛みと、勝手に全身がつってしまうという生活保護の患者さん。
食事がとれなくなってきた99歳の寝たきりのおばあちゃん。

暇だったわけではないのですが、ちょうどこの人達には時間をかけることができました。

 

中国人の男性は、日本語が話せないにも関わらず主張が強くて見るからにクレームになりそうな(笑)感じでした。

なぜ薬がほしいかと聞くと、「これが効かないからだ」と箱を出しました。中国語で書かれた箱で何の薬だこれは?と思いつつ、よく見ると英語でinsulin aspartと書かれていました。

インスリンでした。インスリンが効かないわけがなく、なぜインスリンが効かないと思うのかと聞くと、

「血糖値が高いから」と言い、HbA1cは測ったのかと聞くと、「最近は測っていない」と言いました。「明日中国に帰るなら継続して薬は出せないのに」という思いは胸に秘めて、状態は伝えられるので採血してみましょうと言いました。

結果はHbA1c 9.7で、糖尿病歴は20年と長く、もうちょっとだ、と伝えると少しは納得してきました。

それでも日本の素晴らしい薬がほしいと言い、インスリンが一番大事だと伝えた上で妥協して薬も処方しました。そうするとようやく完全に納得して、帰られました。

こういう人は得てして納得した診療を受けられずに不満が募っていることが多いので、ちゃんと不安を解消し、正しく話を伝えることができてよかったです。

 

40歳代の生活保護の患者さんは、頭痛、肩こり、ふくらはぎのつり、足の痛みがあり、激痛で原因を調べてくれと先月来院し、2回目の受診日でした。

これまで他の病院で全身のMRIや神経伝導検査、CTが行われているにも関わらず原因不明でした。いわゆるドクターショッピングをしてきたのですが、話を聞いてみると、なるほどそれは痛みもでるだろうなという状況でした。

妻とは離婚し、数年前に元妻がどこかにいなくなって知能障害を持った娘さんと一緒に暮らすようになったものの、娘さんは自殺未遂を2回するほど精神状態がよくなく、男一人で洗濯、家事、買い物、病院への送り迎えも行い、短時間ではあるものの仕事も頑張っているようでした。

沢山の痛み止めを飲んでも痛みは改善せず、毎日2-3時間睡眠でしのいでいました。この症状は薬でどうこうなるものじゃなく、根っこにアプローチしないといけないと感じました。色々と話を聞いて、カルテが40行くらいになって、現状がよく分かりました。

娘さんは食事も自分では作れないし、夜中に出回ったりしてしまう。痛みで夜に目が覚めて、寝ていても足がつったり、首が痛くて、起きている方がよい。生活保護になったときも仕事はしていたが、健康保険が払えなくなり、役所に行くと顔がひどいから生活保護を受けるように言われるままに入ったそうでした。

治療はまず、「自分をいたわること」だと考え、

「よく頑張っていると思います。むしろ頑張りすぎています。痛みを和らげるために、まず自分をいたわり、休みをとることから始めましょう。娘さんがデイケアに行っている心に少しゆとりができる間、自分がしたいことが何かを感じて、それをやりましょう。」

とお話していくと、涙を流し、表情が穏やかになっていきました。

 

99歳のおばあちゃんは、昨日から食事が摂れないということで来院されました。

数年前に誤嚥性肺炎を起こしたことがあり、その後から寝たきりでした。半年くらい前から食事が徐々に摂れなくなり、栄養剤1本で食事を済ませたりしていました。1週間前から痰がらみの咳はあるものの熱はなく、本人はほとんど話せないので検査をすることにしました。

採血・採尿・胸部CTを行うも、肺炎はありませんでした。ゆっくりな経過であり、これは老衰が一番考えられました。大事なのは急性期の治療ではなく、「どう最期をおくるのか」です。

脱水もあり、点滴をすればもう少し長生きできる可能性がありました。あと数ヶ月で100歳になります。家族としては、そこまで生かせてやりたいという思いもありました。しかし「経管栄養はしたくない」と以前本人は言っていたそうです。

ご家族の理解は深く、熱心で、体調が悪くなってからは毎日仕事終わりに施設に出向き、話しかけ、身体を起こしてあげたりしていました。

ただ一回の外来で診ることになった私には、何かあった時に対応できません。やるべきなのは「主治医と家族全員とでよく話して決めること」です。私は、家族に看取りが近い状態であることを伝え、集まって相談してもらうようお話し、主治医に手紙を書きました。

私としては、誰しもが最期は亡くなるものであり、大事なのは延命するよりも「亡くなる前の時間を大切にすること」だと考えています。

すでにご家族さんはそれを実践されておりました。あとは本人の望みを最大限尊重し、自然の経過にまかせるのがよいかもしれないと話しました。私の思いは伝えることができ、納得して頂いて、すぐの入院ではなく、持ち帰って家族と話をしてもらえることになりました。

 

 

今日は人生のターニングポイントとなるような、人の人生を垣間見るような診療になりました。こういうのが楽しいですね。

ここぞというところを少しは力になれた気がして、嬉しく感じます。医者になれてよかったなと思います。

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岡部大地

岡部大地

代表理事Japan Healthcare
2012年三重大学医学部卒業後、2015年内科認定医を取得し、総合診療医として診療する。2016年から千葉大学大学院で先進予防医学の研究も行う。2016年9月に一般社団法人ジャパンヘルスケアを設立し、代表理事を務める。
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